電車内で化粧する女性は許せる?許せない?〜最新経済ニュース〜

1日の始まりである朝の通勤電車はさわやかな気分でいたい。
しかしながら、同乗客のマナーの悪さでこのさわやかな気分が吹き飛場されたという経験をした人は少なくないだろう。
ヘッドフォンからの音漏れ、食事のニオイ、騒がしい人たちなど挙げればキリがないのだが、よく議論されるトピックに「化粧をする女性」もある。

■電車内でメークを濃くする「盛り鉄」女子

カバンの中からポーチを取り出し一心不乱に化粧をする「盛り鉄女子」(もりてつじょし:盛る=メークを濃くする、という若者言葉に引っかけた造語)。
彼女たちの行動に対しては、賛否両論だ。

やめていただきたいの一言。
理由としては、快適な車内空間が侵害されるからである。
「他人の化粧は見たくない」「恥ずかしくないのか?」これが筆者を含む「盛り鉄女子」反対派の意見である。
すっぴんから、ファンデーション、アイメーク、ほお紅、口紅を塗り重ね、美人が出来上がっていくさまは、理由はわからないが見ていて気持ちの良いものではない。
不快指数は高く、正体不明の嫌悪感がある。
「身だしなみは、自宅など人目を忍んで済ますもの」という意識があるからだ。
このような反対意見に対して、盛り鉄女子側の言い分として、「寝坊したからしょうがない」「用意する時間がないほど私は忙しい」というおがよく挙げられる反論だ。

確かに気持ちはわかる。
化粧をする女性は、男性よりも朝早く起きなければならない。
それに、ただ座っているだけの退屈な時間を有効活用したい、ということなのだろう。
しかし、退屈な時間があるからといってそれを化粧に充てるのはいかがなものかと、問いたくなる。
また「誰にも迷惑をかけていない」という言い分もある。
はたして本当にそうなのだろうか。

実際は毎朝ツイッターでは、盛り鉄女子たちへの同乗客の心の叫びがつぶやかれている。
たとえば「ニオイがきつい」という指摘。
名を馳せた化粧品には香りの強いものがあり、使う側は優雅な気分になるが、他人にとっては迷惑でもある。
その他にも「化粧中の女性のひじが当たってくる」「アイメークの筆が目に刺さりやしないかコワイ」などのつぶやきが散見される。
お粉がこちらに飛んできたり、口紅が自分の服についてしまったりしないか気が気ではない。
このように多くの同乗客たちは注意などしないだけで、多かれ少なかれ不快な思いを抱いているのだ。
また車内メークが原因で、乗客同士のトラブルに発展するケースもある。

実際にこのような現場に居合わせた。
ある日、電車の中で40代と見られる女性がこってりと化粧をしていた。
隣にいた男性が「こんなとこで化粧するな!」と注意した。
すると一瞬の間を置いて、「うるせ~んだよ、ジジイ!」と甲高い声で威嚇し始めたのである。
うわ、始まったな……と、周囲の乗客はやりづらい雰囲気から目をそらし、膨張客に徹している。
2人の口論は絶えることなく、「化粧品がくさいんだよ」というオジサンの指摘に対しては、「お前の体臭のほうがくせえんだよ、ジジイ!」との女性からの反論。

「化粧がくさい」「体臭のほうがくさい」という水掛け論の結果、はじめに仕掛けた男性のほうが根負けして、別の車両に移ってしまった。
男性の名誉のために言うと、彼に特に気になるような体臭はなかった。
女性の口の悪さに失望したのもさることながら、論点をすり替えて他人をたたくのは、盛り鉄女子の習性とも言える。
彼女たちは「じゃあ前で足を開いて座っているオジサンはいいんですか」「じゃあヘッドフォンから音楽が漏れている人はいいんですか」と反論してくるのだが、どれも同類のマナー違反であることに違いはない。
このような乗客同士のトラブルは、当人はもちろん他の乗客にとっても決して気持ちの良いものではない。
快適な車内が一変して、車両の隅々にまで気まずさ、不快感、恐怖、嫌悪感が充満する。
遭遇してしまったら最後「早く目的地に着かないかな」と念仏を唱えることしかできない。


■鉄道会社は、実害を及ぼす行為であると警笛を鳴らす
物議を醸す盛り鉄女子たち。
このような問題に対して、鉄道会社は策を講じているのだろうか。
化粧を含めあらゆる「車内マナー向上」のため、広告やアナウンスでの呼びかけを行っている東急電鉄に話を聞いた。
「車内での化粧は、なるべく控えていただきたい行為ですが、お客様の良心と判断に任せています」とする一方で、「化粧は、ほかの乗客に『実害』を及ぼす可能性がある行為であると認識してほしい」という。
「化粧品のにおいで気分が悪くなる人が出たり、周囲の人の洋服が汚れたりするおそれもある。電車の揺れで、化粧品や鏡が手を離れて飛んでいってしまったら、ケガをさせるおそれもある。こうした『実害』があることを理解していただきたい。また、トラブルが起きてしまった場合、電車が止まり、ダイヤ乱れの原因にもなります。当社としては、すべてのお客様に快適に過ごしてほしいという思いがあります。マナー向上の、ご協力をお願いします」とのことだった。
法的な観点から見ると今回の車内メイク問題は、どのように論ずることができるのだろうか。
弁護士法人サリュの籔之内寛弁護士に話を聞いた。

「法律や鉄道会社の約款で、『電車で化粧をしてはいけない』と定めるものはないので、法的に電車内での化粧を禁じることは厳しいでしょう。あくまでマナーの問題」とする一方で、トラブルが生じた場合、慰謝料等の訴訟問題に発展する可能性もあるという。
「化粧に関連する行為により第三者に損害が生じた場合は、化粧していた人が責任を負う場合が観念的には否定できません。たとえば、化粧中に電車が大きく揺れて鏡が割れて人にケガをさせた場合などは、電車の揺れを生じさせる原因を作った者(線路に立ち入り電車を急停車させた人、電車を異常な速度で走行させる運転士等)がメインで責任を負うでしょう。
しかし、化粧をしていた人が自身の過失により手元を滑らせたことが原因であれば、賠償の責任を負う可能性があります。たとえば、隣の乗客の顔に線状の傷を生じさせ、3cm以上の後遺障害が残ってしまった場合、後遺障害慰謝料として290万円程度の支払義務が生じることがあります」とのことだ。
化粧をして、乗客とのトラブルはおろか周囲の人間にケガを負わせてしまったらどうにもならない。
盛り鉄女子たちには、このような危険性があることも理解した上で身の振り方を考えて見てほしい。

■公共の場としての「電車」とどう向き合うか

今回の件について取材を進めるうちに、「特に気にならない」という意見も少なくなかった。彼女たちの行為は気にならないと発言するのは男性が多い印象だ。
一方で筆者のように女性には盛り鉄反対派が多い。
ある種の同族嫌悪に似たものかもしれない。
また嫌悪感を増幅させている要員として「私たちは早く起きて、化粧をすませてから電車に乗っているのにズルい!」という本音も見え隠れしている気がする。
ひょっとすると、この構図は校則を破る不良生徒vs.風紀委員の構図に似ているのかもしれない。
「校則守りなさいよ!」とキーキー訴える風紀委員に対して、「校則なんて破ったもん勝ち」と言わんばかりの不良生徒。
残念ながら両者がわかり合う日はこない。
電車は、公共の場である、多種多様な乗客が降り、想像を絶する珍妙な行動を取る人もいる。さまざまな価値観を持つ人が集うパブリックスペースであるだけに、ある程度は黙認するべきなのかもしれない。筆者は盛り鉄女子に出くわすと、視界に入らぬようにそっと目を閉じるようにしている。
すべての乗客にとって快適な車内空間になるよう、マナーの向上を心から願うばかりである。


〜筆者の感想〜
記事中盤までこの執筆者は女性ではなく男性かと思っていた。
しかし、男性よりも女性の方が盛り鉄女に敏感なのは予想外であった。男性の方が「みっともない」「恥ずかしい」などの偏見の眼差しで見ていそうなものだが、そうでもないようだ。
確かに、化粧品というのは独特の匂いがする、あれを女性の香りだといっても良いのではないかというくらいに。
しかし一方で圧倒的に男性よりも女性の方が朝に時間がないのではないだろうか。主夫も増えたとはいえ、食事の準備や子供の世話をして、かつ自分の準備もしなければいけない女性は沢山いる。
時間がなかったからとすっぴんで出社すると、外回りをしない事務職ですら指摘を受ける。
いっそのこと、女性専用車両のように化粧専用車両を1両ほど用意しても良いのではないだろうか。