<名古屋>新旧繁華街“集客戦争”〜最新経済ニュース〜

名古屋市の繁華街・栄にある丸栄百貨店が、6月30日に閉店した。
この20年で衰退が著しい栄地区だが、再開発が進むJR名古屋駅周辺との「集客戦争」が激しさを増している。
地域経済論が専門の神戸国際大学・中村智彦教授が、栄地区の現状と今後を考察する。【毎日新聞経済プレミア】

◇閉店セール中に惜しむ声
丸栄は、前身となる呉服店の創業からは約400年。
第二次世界大戦下の企業整備令で二つの百貨店が合併し、開業してから75年で事実上廃業した。
6月は閉店セールが行われており、多くの客が丸栄を訪れていた。
外壁の巨大なタイル装飾や、エレベーター扉に描かれた洋画家・東郷青児の優美な美人画などを惜しむ人たちの姿が目についた。
また同店のこれまでの歩みを伝える回顧展が開催され、華やかだった百貨店の歴史を振り返ることができた。
開業当時の資料や写真、エレベーターガールの歴代制服などが展示され、「懐かしい」「家族と屋上でよく遊んだ」といった声が見学者から漏れていた。
店内は、筆者が訪ねた6月初旬ですでに棚の商品がまばらになっており、寂しさが立ち込めていた。
地元の60代の中小企業経営者は、「一つの時代が終わるのだと思った。最後の思い出にスーツを仕立ててきた」と話した。


◇再開発中の集客が課題
名古屋には百貨店の「4M」(三越、松坂屋、丸栄、名鉄)があり、栄地区には三越、松坂屋、丸栄が軒を連ねていた。
このエリアには、名古屋市営地下鉄の栄駅と名鉄瀬戸線の栄町駅から西に伸びる地下街「サカエチカ」があり、両駅に近い方で三越につながり、地下街の西端から丸栄に入ることができた。
西端には、丸栄と広小路通りを挟んだ商業ビルのニューサカエビル、「丸栄ホテル」(現・名古屋国際ホテル)が入る栄町ビルがある。
丸栄百貨店の親会社でもあり、これら三つのビルを所有している医薬品メーカー興和(本社・名古屋市)は、丸栄の跡地とニューサカエビル、栄町ビルも順次取り壊し、エリア一帯での再開発を発表している。
これを受けて、サカエチカの西側は人通りが大幅に減少すると考えられる。
シャッターを閉めたままの店舗や、丸栄閉店に合わせて店じまいを告知している店舗もあった。
サカエチカは来年50周年を迎える。
昨年から本格的なリニューアル工事を進めているが、この栄エリアの再開発期間に集客力を維持できるかが問われる。


◇期待される松坂屋新店、公園再開発
苦戦の続く栄地区ではあるものの、新たな取り組みに注目が集まっている。
4Mの一つ、松坂屋を運営する大丸松坂屋百貨店が2020年11月に新店舗を開業すると、今年6月に発表したのだ。
三越のはす向かいとなる「栄」交差点の角地に、東京・銀座で成功しているといわれる「銀座シックス」型のテナントを核とする複合商業施設を建設する予定だ。
この出店について、名古屋市内のある中小企業経営者は「遺恨試合だ」と言う。
松坂屋は名古屋駅(名駅=めいえき)の再開発以前、名駅前に店舗を構えていた。
当初は再開発後にJR東海が建設するビル内に再進出する計画だったが、JR東海側と出店条件が折り合わず、結果的に高島屋が出店することとなったのだ。
松坂屋は栄にある名古屋店を旗艦店とし、中京地区では最有力の百貨店である。
栄地区から西に2キロほどの名駅前への商業集積地のシフトは、松坂屋として見過ごせるものではない、これが栄への新規出店が「遺恨試合」と呼ばれる理由だ。
また名古屋市は栄地区の衰退に歯止めをかけ、観光客の誘致などを進めるために、テレビ塔のある久屋大通公園の再開発を行うため、三井不動産を中心としたグループにその計画を託す。
テレビ塔の南側にその姿が美しく映える大きな池を作り、園内にはオープンテラスのある飲食店などが並ぶ計画で、20年に完成予定だ。
栄地区の北にあり、天守閣の木造復元が進む名古屋城との間で観光客の動きへの流動性が期待されている。


◇激しさを極める集客競争
しかし、それらが実際に稼働し始めるのは早くても20年からだ。
「名古屋では、栄地区と名駅がシーソーのように集客力を変化させてきた。10年もすれば新規出店などで栄がにぎやかになり、また集客力を高める」(名古屋市内の飲食店経営者)という意見がある。
一方で、「名駅は名鉄、近鉄、JRが乗り入れる通勤通学の中心。いったん名駅周辺に商業集積地が移ってしまった以上、栄に人が戻るのはかなり難しい」(名古屋市内の不動産会社経営者)という見方もある。
名駅周辺は、商業施設に限らずオフィスビルの開業も相次いでおり、従来「駅裏」と言われた名駅西側にも多くの飲食店が開業している。
またこの20年間で郊外の大型ショッピングモールの出店が相次いだ。
栄地区では続々と再開発計画が進められているが、名古屋の商業集積地の集客競争は激しさを極めているのが現状だ。


〜筆者の感想〜
名駅にJRゲートタワーができる数年前からの商業施設や人の流れを見ているが、名古屋人の特性上「最終的に慣れた場所に戻る」のではないかと思わずにはいられない。
JRゲートタワーや記事にもある高島屋が名駅にできたときは、人の流れが栄から名駅へと大きく動くのではないかと予想され、実際にそうなった。
しかし一方で、名駅の再開発後数年で、また動きが変わってきているように思う。
新しいものに対して敏感に反応する名古屋人ではあるが、一度そのほどを確かめると元の自分の通い慣れたところに戻っているように思う。
あくまでこの数年を見ての個人的な感想なので、今後の栄の再開発も含め名古屋マーケットからは目が離せない。